都落ちの最後の春。
平家の頭領、宗盛寵愛の美姫 熊野(ゆや)のもとには故郷の母より度々手紙が届いていた。
母は重い病におかされ、来年まで生きてはいられないだろう、どうか帰ってきておくれ。切なる便りを読み上げるが為政者は聞き入れない。熊野を伴い清水寺の花見に出発する
道々の風景も、母を思わせるばかり。清水の舞台で舞い見渡す桜は雲か霞か、観音の慈悲のヴェールと願いを込め。折しも通り雨に散る桜に母を思い涙する熊野。さすがの宗盛も帰郷を許した。
花は春が来ればまた咲くが母の命は一度限り。平家の花は再び咲くのか。
複雑な思いを抱え人は道を選択してゆく。
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