高安長者の愛息、俊徳丸は讒言により家を追われた。前業を嘆き哀しみのあまり盲目となる。
救いのない闇の道を、かの一行尊師に習い仏道を信じ、四天王寺へと向かう。聖徳太子が初めて仏の慈悲を実践されたこの寺は折しも彼岸。夕陽にキラキラと花びらを散らす難波の梅の香り・・・
四天王寺の西門、石の鳥居。その向こうには難波の海がひらけている。その彼岸に西方浄土の東門が、燦然と輝いてあるのが俊徳丸にはまざまざと見える。
その眼が見えないからこそ、より尊く、輝かしい世界が観えるのだ。
石の鳥居の扁額には「釈迦如来 転法輪処 当極楽土 東門中心」と記されている。
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