最初に手に当たった和歌を読み解く歌占。
父を探す少年を連れて評判の男巫を訪ねた男。自身も気掛かりがあり、歌占を引く。
「北黄に。南は青く東白。西紅の染色の山」
これは仏教思想で宇宙の中心に立つ須弥山。その絶対的高さは父の恩。染色は蘇命路に通じ、父の病の快癒と判じた。
少年も占を引く。
「鶯の卵の中の郭公 己が父に似て己が父に似ず」
鶯は「おう」と読み「逢ふ」に通じる。既に父に出逢った和歌。
折しも郭公が高らかに啼いた。劇的な再会。父は頓死し三日間地獄を廻り蘇生したのだ。
やがて故郷二見浦へ連れ立ち帰り行く父子の姿は、夫婦岩からの着想ではないだろうか。
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