今をときめく大臣、藤原房前は母を知らない。実は賎しい海士との噂をたよりに、讃州志度を訪れた。
夜の海に現れた女は房前の母を知ると言い、その昔を語る。
唐から藤原家へ贈られた宝珠が志度の沖で龍宮に盗まれた。惜しんだ藤原不比等は志度へ下向し、海士乙女と子をなした。
乙女は命を懸けて龍宮へ向かう。胸を切り裂き宝珠を押し込め、引き揚げられた乙女は、龍や悪魚に喰われて見るも無惨。今生の別れにと赤子を添えると一途にに乳を吸うのだ。
生前の契約のとおり、ふたりの息子は大臣の地位についた。
正体を明かした霊は我が子の篤い弔いにより仏となって国を守る。
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