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安達原 あだちがはら

~​ Adachigahara ~

あらすじ那智東光坊の阿闍梨祐慶は山伏となり、諸国修行の旅に出た。一行は奥州安達原に至り宿を借りる。

粗末な庵の中でひとり、境涯を嘆く女はいわくありげである。室内には見慣れぬ糸車(枠桛輪:わくかせわ)があった。女は祐慶の求めに応じそれを使って見せる。枠桛輪は己の生涯そのものだ。定められた宿命に限られた人生は巻き取られ、過去を巻き戻すことはできない。微かに差し込む一筋の月光は、魂の救済を求める心の深層を思わせてやるせない。

女は薪を取りに出るが、留守中奥の間を覗かぬよう念を押す。従者が隙をみて寝室の内を覗くと、人間の屍骸が山積みにされていた。一行は慌てて逃げ出すが、人食い鬼の正体を暴かれた怒りに燃えて鬼が追ってくる。しかし山伏の験力によって鬼は調伏され、夜嵐の中に消えてゆくのであった。

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