
船弁慶 ふなべんけい
~ Funabenkei ~
あらすじ
平家打倒は成し遂げられた。多大なる貢献により称賛されるはずの九郎判官義経は、却って兄頼朝の脅威となり、謀反を疑われ追われる身となった。ひとまず都を引き払い九州へ向かおうと尼崎(兵庫)、大物の港に逗留する。
厳しい船旅に静御前を伴うのは好ましくないと弁慶は義経を説得した。別れを告げられた静は深く悲しむが、気持ちを奮い立たせて義経の前途を祈り舞を舞うのだった。
やがて船出のとき、俄かに大風が吹き黒雲が起こり、荒れ狂う波の向こうに現れたのは平家一門の亡霊達であった。壇ノ浦で入水した安徳天皇をはじめとして、夥しい怨霊が嵐を起こしたのだ。
平家軍の総大将であった平知盛の怨霊が長刀を手に、船を沈めようと襲い掛かる。義経は太刀を抜き応戦するが、やがて弁慶の祈祷の力で来臨した不動明王によって怨霊は退散するのだった。

兄・頼朝に謀反を疑われた義経は西国へ逃れるため、尼崎大物の港へ。 弁慶は静御前との別れを促す。

厳しい船旅へ伴うことは困難であることを告げられるが、 永遠の愛を誓ったはずと、静は俄かに信じがたい。

どこまでも傍に付き添い愛する人を護りたかった静。 別れの宴席で義経の無事を祈る舞を舞う。

今こそ船出に相応しい時。静は決然として船出を促し烏帽子を脱ぐ。 敢えて涙を義経には見せず別れるのだった。

天候は穏やかではないが、これ以上遅れては追手がかかる。 出港した船を嵐が襲う。それは平家一門の怨念。

壇ノ浦に沈んだ安徳天皇を筆頭に、平家の怨霊が立ちふさがった。 中にも総大将・平知盛の怨念は凄まじい。

己が沈んだ海底に、憎き義経をも沈めんと、怨霊は波風を立てて襲い掛かる。 義経は臆する事無く闘った。

比叡山の僧兵、弁慶は数珠をもんで祈祷した。 五大明王の来臨により悪霊は封じられ、荒波の彼方へ去るのだった。