伊勢物語より
宮仕えに忙しく、まめに愛情を注いでくれない夫。
妻は別の男と再婚し、地方へ下った。
やがて出世した元の夫が朝廷の使いとして宇佐にやってきて、
接待役の役人の妻が、別れた妻と知る。
奥方の酌でなければと言う高官。
元の夫とは知らないままに
妻は酒肴に橘の実を供し酌をする。
高官は橘を手に取り愛しげに
さつき待つ はな橘の 香をかげば
昔の人の 袖の香ぞする
はっと顔を上げてよく見ると
その人は元の夫だった。
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女はどう思ったのか
出家し、尼になってしまった
さつきまつ
はなたちばなの
それだけ聞いたら胸が切なくなる
大好きなお話。
能「杜若」では、
在原業平の永遠の想いびと、
高子后に許された禁色の紫、
濃(恋)紫のゆかりの花、杜若が
昔男の名を留めて
花、立ちばなの…
匂い移る、あやめの鬘の…
と引用されて、刻々と変わる明け方の
杜若の色と、懐かしい恋の香りが
濃密に満ちて行くのです。
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